鷲羽岳を源流とする黒部川は、三つの廊下を流れる一つの下ノ廊下、やがて日本海に注がれる。白竜峡、十宇峡、S宇峡と、深い谷を穿って流れる様子は、黒部の自然を堪能させてくれる。下ノ廊下をたどる道は、旧日電歩道とよぱれる。電力開発を目的に、調査や工事のために穿った道で、この下ノ廊下の歩きとはひと味もふた味も違う魅力が展開される。
■第1日
黒部ダムを出発し、下ノ廊下を阿曾原温泉へ
▼コースタイム 7時間40分
アルベンルートの黒部ダム駅でトロリーバスを降りたら、黒部ダム方面への出口を見送ってトンネルを少し進み、登山者出口(カレ谷出口)から外へ出る。ここから黒部川へ向けて大きく下り、木橋で黒部川を渡る。放流がある時の黒部ダムは一層の迫力が増す。
丸山基部の岩壁をへつるように進んでいく。木橋で滝下の流れを渡るとほどなく内蔵助谷出合に着く。出合の分岐で内蔵助平への道と分かれ、丸木橋で内蔵助谷を渡る。道は黒部別山の裾に沿って、へっりながら進んでいく。すべりやすいザレた下りで河原へ出る。行く手に黒部別山壁尾根の一部か見えてくる。川面から50mほどの高さをたどる道は、狭いうえに高度感がある。
やがて棒ノ木平とよばれる広葉樹の森へ入り、しばらくこれをたどる。荒々しい黒部の流れとしばし別れて、ひと息つける。この森を出ると河原から岩壁を削り掘った狭い水平歩道となり、対岸に新越ノ滝を望む。谷はさらに狭まり、行く手に黒部別山壁尾根の一部が見えてくる。川面から50mほどの高さをたどる道。この付近は屏風岩の大へっりとよばれ、気の抜けない道が続く。
途中ハシゴの登下降で崩壊地を高巻き、さらに狭い岩壁の水平歩道を進むと、黒部別山谷出合に着く。 出合付近は雪がいちばん遅くまで残るところで、時期によってルート状況が大きく異なる。秋も遅い時期になれば飛び石伝いに沢を渡れるが、シーズンはじめには不安定な雪渓を高巻くようにルートがっけられており、通過には充分な注意か必要だ。
黒部別山谷出合からも狭い岩壁の水平歩道を行く。谷は白く泡立つ激流と、深く青い瀞が美しい白竜峡の峡谷へ入る。ところどころ、岩にかけられた丸木を渡る箇所もあり、スリップに要注意だ。
しばらくして道は樹林帯へ入り、やがて十字峡吊橋へ出る。十字峡は左手から剱沢、右手から棒小屋沢の流れが黒部川と合流する地点。吊橋の手前は広場になっていて、ここから本流側へ少しヤプの踏跡をたどると、十字峡を見下ろす岩盤上へ出ることができる。ただし、すべりやすく、足もとも不安定なので注意が必要。
十字峡の橋から
十字峡
十字峡吊橋を渡ると、再び谷は深く険しくなり、そのはるか上部の岩壁を削ってつくられた水平歩道をたどる。足もとから沢面まで、岩壁はすっぱりと垂直に切れ落ちている。半月沢を越え、谷に沿って右ヘカープしていく。足もと深く流れる谷は、岩壁に押しつぶされそうなほど幅を狭め、いくっもの小さなカーブを描きながら、青い流れを見せている。この付近がS字峡。
対岸に黒四地下発電所の送電線口が見えてくると、つづら折りの下りとなる。下りきったところから。東谷吊橋で黒部川を渡り、対岸へ移る。ここから車道に出て隧道を抜け、仙人ダムヘ向かう。
阿曾原、欅平方面の標識にしたがって、ダム上部(046_)かから管内へ入り、トンネルを行く。人見平宿舎の手前でトンネルを出て。再ぴ登山道となり、ここから水平歩道まで約130mの急登となる。樹林帯の水平歩道に出れば、ほどなく阿曾原温泉小屋(049_)に着く。露天風呂に浸り、疲れをときほぐす。
仙人ダム
阿曾原温泉小屋
■第2日
阿曾原温泉から水平道を欅平へ
▼コースタイム 4時間30分
早朝、阿曾原温泉小屋から水平歩道を棒平へ向かう。前日同様、右側が深く切れ落ちた断崖につくられた道を行く。すれ違いや転倒に充分注意したい。
阿曾原温泉小屋からキャンブ場を抜けてすぐに沢を渡る。この先で標高差約150mの急な登りで水平歩道に出て、これをたどる。常に右側が深く切れ落ちた断崖につくられた道を行くので、すれ違いや転倒には充分注意したい。大きな滝の下を通り、オリオ谷をトンネルで通過する。
やがて断崖をくり抜いた、狭くて高度感ある山の鼻に出る。ここが大太鼓とよぱれるところで、奥鐘山の西がすばらしい。
阿曾原温泉小屋
この先の志合谷はトンネルで越える。トンネル内は右へ曲がり、天井が低く、足もとを水が流れていて歩きにくい。照明施設はないので、ヘッドランプは必携だ。
この先も狭い断崖にルートは続くが、やがて尾根上に出る。これをしばらくたどり、送電線の鉄塔をすぎた先で尾根を離れ、東側へ大きく下ると棒平駅に着く。