北アルプスの奥懐に位置する雲ノ平は、黒部源流と岩苔小谷にはさまれた溶岩台地上に広がる草原地帯。東は水晶岳と鷲羽岳、南は三俣蓮華岳と黒部五郎岳、西は北ノ俣岳、そして北は黒部本流をはさんで対峙する赤牛岳と薬師岳といった山々が、雲ノ平の四方を取り囲んでいます。周囲の山々と、お花畑に点在する湿原や草原がっくり出す風景は、まさに「庭園」とよぶにふさわしい。この「庭園」風景と、奥深い北アルプス山中にただよう秘境の雰囲気が雲ノ平最大の魅力です。

折立から薬師小屋
●コースタイム 6時間40分
沿面距離 11km 累積標高差 +1105m -550m
 

折立登山口

 祈立休憩所の前を通って登山道に入ると、すぐ左手に十三重の塔がある。これは1963年1月に、薬師岳で遭難した13人の愛知大学山岳部員を供養する慰霊塔。ここをすぎると太郎坂とよばれる急登がはじまる。

十三重の塔

太郎坂

古木

 太郎坂とよばれる急登の樹林帯の尾根上をつづら折りに登っていく。折立から1,870m三角点まで約1.8kmで482mで俯角約18度ある。

樹林を出ると展望が開ける

要所にベンチあり

薬師岳

 ひたすら見通しのきかない針葉樹の森をたどり、標高1800m地点をすぎると尾根の傾斜がひと段落し、さらにひと登りでベンチのある三角点の広場に出る。1,870m三角地点東側を眺めると、いく重にも連なった稜線の向こうに薬師岳が姿を見せている。五光岩ベンチから太郎平小屋まで約2㎞地点で、右手前方には北ノ俣岳の美しい稜線が望める。この先も、よく手入れされた道が続く。

遠望に北ノ俣岳

要五光岩ベンチ

木道が太郎平まで

 やがて幅広の尾根に続く穏やかな木道歩きとなり、ほどなく太郎平小屋の建つ太郎兵衛平に着く。小屋前は広い広場となっており、ここで少し小休止。

お花畑が広がる

太郎平小屋

太郎山から薬師を望む

 太郎平小屋から北ノ俣岳方面へ木道をたどる。すぐに左へ分かれる薬師沢へのルートをたどり、稜線から離れて太郎山の東斜面を下っていく。正面には祖父岳を上にのせた台形状の雲ノ平、その左側に水晶岳、右側には三俣蓮華岳が望まれる。草原をトラバースぎみに下り、太郎平小屋の水源になっている小沢を越える。道は尾根上の急傾斜となり、薬師沢へ向かって樹林の中を下っていく。 やがて薬師沢の源流部へ出て、沢を橋で渡る(第一徒渉点)。しばらく先で再び橋を渡り(第二徒渉点)、明るい草原や針葉樹の森に続く木道を緩やかに下っていく。ほどなく、右手から流れこむ沢を、もう一度橋で渡る(第三徒渉点)。ここが北ノ俣岳と赤木岳から流れこむ薬師沢左俣との出合である。これら薬師沢沿いの3回の徒渉には、いずれも橋がかかっているが、増水時の通過には注意が必要。

最初の橋・第一徒渉点

第三徒渉点

カベッケが原

 左俣出合から先も、ササ原の木道と針葉樹の森をたどる。整備された木道は歩きやすい。 やがて木道に導かれて、平坦なササ原が広がるカベッケが原に出る。正面に針葉樹に覆われた雲ノ平が台形状の山となって姿を現す。カペッケが原を抜けて、小尾根をわずかに下ると薬師沢小屋に着く。ここで薬師沢は黒部川と合流し、やがて深い瀞と谷を穿つ荒々しい峡谷となっていく。

薬師沢小屋

薬師沢出合と薬師沢小屋

薬師沢小屋から高天原
●コースタイム 6時間
沿面距離 7.9km 累積標高差 +750m -600m
 

吊橋

 薬師沢小屋からは、吊橋を渡り、すぐにハシゴを伝って河原へ下りる。この先で高天原へ向かう大東新道と分かれ、右手の樹林帯へ取り付く。このあたりは増水時には通行不能となるので要注意。ここから展望のきかない針葉樹林帯の急登をひたすらたどる。足もとの岩や木の根は非常にすべりやすいので、注意が必要だ。傾斜が落ちると木道が現れて、いよいよ雲ノ平の一角へ入る。木道をたどり、灌木帯を抜けると、展望の開けたハイマツ帯のアラスカ庭園に出る。

大東新道との分岐

アラスカ庭園

中ノ俣岳を望む

 薬師沢小屋からは、吊橋を渡り、すぐにハシゴを伝って河原へ下りる。この先で高天原へ向かう大東新道と分かれ、右手の樹林帯へ取り付く。このあたりは増水時には通行不能となるので要注意。ここから展望のきかない針葉樹林帯の急登をひたすらたどる。足もとの岩や木の根は非常にすべりやすいので、注意が必要だ。傾斜が落ちると木道が現れて、いよいよ雲ノ平の一角へ入る。木道をたどり、灌木帯を抜けると、展望の開けたハイマツ帯のアラスカ庭園に出る。

雲ノ平の木道

ハイマツの小尾根を越えて

鉄ハシゴ

 雲ノ平山荘から北にハイマツの小尾根を越えて浅い谷を通り草原から岩とハイマツが広がり奥スイス庭園から樹林に入る。樹林を抜けて2439mの詩ノ原に出て眺望がよくこの草原をいくと樹林帯に入り何ヶ所かの鉄ハシゴを通り斜度のある道を下り平坦な尾根上の大東新道との分岐である高天原峠に着く。

高天原

高天原山荘

高天原温泉は15分ほど下った沢

 高天原湿原である。本道をたどると赤い屋根の高天原山荘に着く。宿泊手続きを終えたら入浴と散策に出かける。温泉は山荘から15分くらいの下流で、河原の真ん中に露天風呂がある。まさに自然の中の温泉だ。対岸の安定した場所には、男性用と女性用の露天風呂もある。

男性用と女性用の露天風呂もある

露天風呂

高天原~雲ノ平~薬師沢小屋
●コースタイム 7時間10分
沿面距離 10.9㎞ 累積標高差 +760m -960m
 

水晶池

 高天原に別れをつげて水晶岳の西側斜面につけられた樹林の中の登山道に入る。ゆるやかな登りであるが、水晶池にはなかなか到達できない。やっとのことで水晶池入口に到達。登山道からすこし離れているので水晶池を往復する。岩苔小谷に沿った道を少しずつ標高を稼ぎ水晶池から2㎞ぐらい過ぎてから岩苔乗越への登りにかかる。やがて岩苔乗越から流れ落ちる沢に出る。岩苔乗越へ向けて最後の登りになるが、このあたりはお花畑がひろがる。やっと岩苔乗越にでる。薬師岳、水晶岳、三俣蓮華岳などの展望がえられる。

祖父岳を望む

祖父庭園

祖父岳から笠ヶ岳を望む 

祖父岳から笠ヶ岳を望む

祖父岳から黒部五郎岳を望む

祖父岳から黒部五郎岳

 緩やかに続く木道をたどり、スイス庭園を行く。池塘が点在する草原の彼方には赤牛岳や水晶岳が望まれる。木道にそって行けば雲ノ平山荘に着く。

 
 
■第4日
薬師沢小屋~太郎兵衛平~折立
●コースタイム 5時間50分
沿面距離 11㎞ 累積標高差 +550m -1105m
※雲ノ平山荘からは往路を下山する。